導入事例

【導入事例6】2020年までにグループ全社員完全禁煙を目指す!/沖縄ツーリスト株式会社様

1年半をかけ全社員と個別面談
顕在化した課題に取り組む

旅行事業とレンタカー事業をコアとする沖縄ツーリスト株式会社(OTS)。2015年、会社の商品・サービス改善などをテーマとして全社員にヒアリングした結果、見えてきた課題の一つが喫煙問題だった。健康経営推進室は2020年までにOTSグループ全社員の喫煙者ゼロに挑む。ここまでの道のりと、残り1年を切った現時点での成果および展望について聞いた。

商品力・サービス力に影響する
たばこのにおい

取締役 マーケティング戦略本部長 安部 潤さん/総務部 健康経営推進室 マネージャー 玉村 美智子さん  沖縄ツーリストは、二〇一八年創業六〇周年を迎えた。同社が旅行事業と並んで柱とするレンタカー事業をスタートさせたのは沖縄返還前のこと。県で初となる認可を受けた当時、保有する車両は左ハンドルだった。そんな老舗企業がグループの全社員を対象とした個別面談を実施したのは二〇一五年。社員六四一人(当時)すべての面談を主導した安部潤さんが振り返る。
 「会社の収益力を上げることを目的に、あらかじめ社員には『商品力』『サービス力』『ターゲット顧客』『発信力』『共感力』の五つについて考えておくよう周知しました。その上で一人二五分くらいの時間を取ってじっくり話を聞きました。全員分を終えるまで一年半かかっています。会長または社長も立ち会い、全社を挙げての面談という位置付けでした」
 面談の中で、特に商品力とサービス力に関して多く聞かれた声があった。それは「たばこのにおい」の問題だ。レンタカー事業は二三〇〇台の車両を有しており、そのすべてが禁煙車だ。ところが、「車内がたばこくさい」という利用客からのクレームが、たびたび寄せられていたのだ。原因は、洗車などのメンテナンスを行う社員の喫煙だった。その場で吸っていなくても、車内のファブリックににおいが移ってしまっていたのだ。同様に旅行部門でも、ツアーバスの添乗員や、カウンターで接客するスタッフのたばこのにおいが指摘された。
 「レンタカーもツアーバスも店舗も、禁煙をうたいながら社員がにおいをまき散らしている。ビジネスとしてはもちろん、健康経営の観点からも問題です。面談の終了を待たず、健康経営推進室を発足させました。ゴールは二〇二〇年までに全社員を非喫煙者にすること。そのために逆算した取り組みを、トップダウンで行うことを明言しました」

各部署をチームにして宣言書を提出

「非喫煙者となるか、または紙巻たばこを吸わない」ことを決意表明する、宣言書と継続宣言書。個人ではなくチームで禁煙に取り組むことも、成功率を高める工夫だ  グループ全社員を非喫煙者にする。その目的は社員の健康と提供するサービス、両方のクオリティー向上だ。改善プロセスには、喫煙社員の禁煙化と並行して、たばこの煙による非喫煙者の健康被害防止も含まれる。
 健康経営推進室が最初に行ったのは、喫煙に関する実態調査。アンケートの結果、全社員に占める喫煙者の割合は三〇%、一九六人だった。健康経営推進室の玉村美智子さんは、彼らを対象にした禁煙説明会を企画する。
 「外部から保健師さんを呼び、たばこの害について講演してもらいました。喫煙者はやむを得ない用事のある者を除き、参加必須です。沖縄県内では全員が出席できていましたね。順次、本州でも開催し、北海道では健康経営の取り組みとして、地元テレビ局で紹介されました。正直なところ、こうした啓発講演会で禁煙できる人はそう多くないのですが、社会からの注目度を意識する機会になったのではないかと思います。専門家の話を聞いても禁煙を決断できない人は個々に面談し、その人に合った禁煙へのロードマップを一緒に模索しました」
 禁煙を後押しするために、玉村さんたちは各部署をチームとし、一丸となって禁煙というミッションを遂行してもらうことにした。取り組みに先立っては「チーム内の全員が非喫煙者となるか、または紙巻たばこを吸わない」という決意表明の宣言書を提出してもらう。
 「宣言書を出すことに反発はありませんでしたが、プレッシャーは少なくなかったと思います。宣言書を出せなかったのは、どうしても紙巻たばこをやめられない人がいた二チームだけでした。チーム制にしたのは、普段からチームワークが大切な事業なので、みんなで同じ目標に向かった方ががんばれると考えたからです」

「健康増進支援金」支給。
希望者へは加熱式たばこも

【図表❶】全社員禁煙化までの流れ/【図表❷】喫煙率の推移と利用するたばこの種類  さらに社員のモチベーションを上げるために、「健康増進支援金」として、役員を除く全社員に一万円が支給された。
 それでも喫煙を続ける、という社員はいる。その場合の次善策として、加熱式たばこを導入。加熱式たばこを選んだのは、非喫煙者である社員やお客さまに対して煙やにおいの課題を軽減できるのではと考えたからだ。希望者には、健康増進支援金の代わりに加熱式たばこを会社から支給することにした(図表❶)。
 二〇一八年一二月、玉村さんたちは再び喫煙の実態調査を実施。宣言書の提出をはじめとする数々の取り組みを始めてから二年三か月が経っていた。結果は、喫煙者が八九人、全体の一四%。スタート時のほぼ半分だ。そして喫煙者の九二%は、加熱式たばこを利用していた(図表❷)。添乗員やレンタカーのたばこのにおいに関する、お客さまからのクレームはなくなった。

喫煙率は半減したが
「誇れる数字ではない」

 喫煙者が半減したというこの数字を、安部さん、玉村さんはどう見ているのか。
 「『一四%』は決して誇れる数字ではないと思っています。トップ主導で『全社員を非喫煙者にする』という一貫したメッセージを出していて、ゴールまで残り一年を切っている段階で、まだやめ切れないのか、と。個人の嗜好でもあり強制することはできませんし、私自身二〇年前に禁煙しましたので、簡単でないことはわかっているのですが……」(安部さん)
 「パーセンテージだけ考えれば一定の成果は出ていると思えるものの、八九人と聞くとまだまだだな、と感じます。ただ、体感的には確実に非喫煙者が増えました。沖縄県内はまだ喫煙可の飲食店が多いのですが、社員の食事会などでは自然に灰皿を片付けたり、衝立で外からの煙をシャットアウトしたりと、『吸わない』ことが共通の認識になっています。添乗員やレンタカーのたばこのにおいに関するお客さまからのクレームもなくなりました」(玉村さん)

残り一年を切り、サポートを再強化

 二〇二〇年の目標達成に向けて、玉村さんは喫煙者の禁煙サポートに一層力を入れている。二〇一九年一月には産業医を招いた勉強会を離島や本州で開催し、八人が禁煙外来の受診を希望した。残り八一人とは個人面談を含め、会社として何ができるのかを考えていく。
 「禁煙外来に行っても、体調を崩すケースがあるようです。やめたいと思っているのに仕事に影響が出るようでは
禁煙自体が難しくなってしまうでしょう。より柔軟な方法はないのか、私も勉強中です」(玉村さん)
 安部さんは年末を待つのが怖くもあり、楽しみでもあるという。
 「最初からゴールを明言しているので社員も意識していると思いますよ。今後はなんらかの形で、禁煙を達成できていない社員数を公表しようとも考えています。その人数を禁煙できていない社員が知ったとき、『まだ喫煙者がいる』と安心するのか、『自分はこれだけしか残っていない人数のうちの一人なのか』と危機感を覚えるかは、当人次第ですが」(安部さん)
 同社は新入社員の採用をプロジェクトチームで担当しており、安部さんはその一員だ。会社説明会では禁煙に関する取り組みを積極的に紹介する。社員の健康に留意し、「選ばれる会社」になるという企業姿勢を示す重要な施策だからだ。学生からの反応はいい。ホスピタリティーが求められる分野だけに、志望する学生の禁煙に対する意識も高いのではないかと安部さんは見ている。
 喫煙率が半数以下に低下したという成果に、二人は決して満足しない。年末に果たしてどのような結果が出るのか。もし喫煙者がゼロになったら、玉村さんの仕事も一段落だろうか?
 「いえいえ、今度はゼロを継続するという使命がありますから、この仕事に終わりはありません。健康経営推進室は喫煙問題だけでなく、定期健診のフォローも行っています。毎回、一般健診のあとは四〇~五〇人が特定保健指導の対象になるのですが、以前は総務部が該当者に声をかけ、その中から何人かがしぶしぶ指導を受けるだけでした。健康経営推進室ができてからは日程表を作り、『行くか行かないか』ではなく『いつ行くか』という状況を作っています。おかげでいやも応もなくほぼ全員が指導を受けるようになりました」
 沖縄県はかつて長寿県として全国に知られていたが、現在は他県に抜かれてしまっている。再びトップを取り戻そうと、県を挙げての健康向上イベントが盛んだ。沖縄ツーリストは老舗企業として、地元で開催されるウオーキング大会に協賛したり、社員の参加料を負担したりしている。同社は喫煙対策を含む社員の健康推進に、地域とも手を取り合って取り組んでいる。

沖縄ツーリスト株式会社

本社 沖縄県那覇市松尾1-2-3
代表者 代表取締役会長 東 良和
従業員数 618人(2019年3月1日現在)
事業内容 旅行企画販売事業、観光企画事業、レンタカー事業、保険事業、教育・スポーツ&コンベンション事業、ドローン空撮事業 等
ホームページ https://otspremium.com/